コミュニケーション

「実のあるネットワーク」は、「ギブ」を惜しまず、公私も分けずに「友達になる」ことでつくられていくものだと知った。

人脈から仕事を引っ張ってくる」ことにおいて、私の知る限りではマーケティングコンサルタント時代にお世話になった「専務」の右に出る人はいない。

在職中、住宅、化粧品、食品、SIer、ステーショナリー、リゾート、アパレル、ペットフード、航空、鉄道まで私は多方面のクライアントを担当した。

このうちの「三分の一」は専務の人脈によるものだった。

私の他にも、専務の人脈から仕事をつくる人が多くいたことを考えると、まさに専務は会社にとって「なくてはならない存在」だったのだ。

思うに、「人脈、人脈」と息巻いて人と会い、名刺の数やFacebookの友達数を矢鱈と増やしたような「浮薄なネットワーク」に対して、専務のネットワークはまるで友人のような信頼関係によって結ばれた「実のあるネットワーク」だ。

退職して自分でも経営をするようになり、専務のネットワークの威力をあらためて痛感する毎日である。

「どうしたら専務のような実のあるネットワークをつくることができるのだろうか」

そう思っていたところ、

先日たまたま読んだ一冊の本が、この疑問についてほぼ完全に答えてくれた。

その本は、世の中のあらゆる成功ルールを検証して全米ベストセラーにもなった「残酷すぎる成功法則」という本だ。

この本によれば、「実のあるネットワーク」をつくるために必要なことは「友達になること」に尽きる。

「なんだそんな身も蓋もない話か」と思うかもしれないが、私にとっては大きな発見があったので以下に詳しく記す。

シリコンバレー最高のネットワーカーのネットワークづくりの秘訣は驚くほどシンプル

シリコンバレー最高のネットワーカーのアダム・リフキン氏の「ネットワーク作りの秘訣」はこの本の中で最も勉強になる箇所と言っても過言ではない。

リフキン氏は、2011年のフォーチュン誌で「シリコンバレーで最高のネットワーカー」と評された人である。

「シリコンバレー最高のネットワーカーは一体どんな巧みな手段でネットワークを作っていったのか?」

私のこの問いに反して、その方法は驚くほどにシンプルだった。

2011年、「フォーチュン誌」は彼を、シリコンバレーで最高のネットワーカーに指名した。

ところが実は、アダムはシャイな内向型人間である。それから、めったにいないようないい人だ。皆からは「パンダ」というニックネームで呼ばれている。

パンダのネットワークづくりの秘訣は何かといえば、友達になる、ただそれだけのことだ。

友達になる。

ネットワークづくりは、誰もが磨ける技であるだけでなく、じつはあなたがすでに知っている技だったのだ。 

ハーバード 大学ビジネススクールのフランチェスカ・ジーノ氏によれば、「何かを得るだけが目的」で人と会おうとするとき、私たちは「後ろめたさ」を感じてしまうという。

一方で、私たちは意識的、作為的なときよりも、予期せぬ出会いやまったくの偶然だと思えるときの方が、抵抗なく人脈づくりができる。

したがって、「人脈づくり」に関して抵抗を感じるのはごく自然のことで、もしも一切抵抗を感じない人がいるとすればその人の心はただ強い。

このことからしても彼の「友達になる」は非常に理にかなっている。

「人脈づくり」というと後ろめたさを感じて動きにくい。

しかし、こちらが何かを得るだけではつくることができない「友だち関係」になることに焦点をあわせれば、この問題は解決されるからだ。

ここでの教訓は「ネットワークづくりの見方を根本から変えよ」だと言える。

実は、人間は仕事とプライベートをはっきり分けて考えることができない

この本の中にはさらに重要な示唆が示されていた。

それは「実は人間は仕事とプライベートをはっきり分けて考えることができない」という事実だ。

私たちは仕事と私生活をはっきり区別しているつもりだ。ところが、人間の脳はじつはそうではない。

人類は、その歴史の大半を小さな集団で暮らしてきた。

そこでは誰もが顔見知りで、ともに働き、ほぼすべての者が血縁によって結ばれていた。

つまり、私たちの脳にとって、仕事と私生活の区別はまだ新しく、違和感があり、恣意的なものといえる。

だから「ネットワーキング」が空々しく響き、「家族」が心地よく響くのだ。

例えば、アイスランドは、世界で幸福度が高い場所の一つとされているが、これも「実は人間は仕事とプライベートをはっきり分けて考えることができない」で説明がつく。

アイスランドでは人々が密接につながっており、どこへ行っても友達に出くわすという。これがアイスランドの日常だ。

だから、「友だちにバッタリ会ってしまって」という遅刻の言い訳もまかり通ってしまう。

つまり、アイスランドの人間関係が心地いいとされるのは「仕事とプライベートをはっきり分けて考えていない」という理由が挙げられるのだ。

思うに、専務のそれも渾然一体となっていた。

平日と休日に境はなく、常に誰かと会い、食事をしたり、お酒を飲んだり、釣りをしに行ったり、色々な人と家族ぐるみでの付き合いもよくされていた。

先方との打ち合わせに一緒に訪問した際は、「お客さん」という関係ではなく、「仲良しの知り合い」あるいは「友人」のように感じることの方が多かった。

つまり、専務もアイスランドの人々のように「仕事とプライベートをはっきり分けて考えていない」人なのだ。

そして、シリコンバレー最高のネットワーカー同様、人間関係を友達のような親しい間柄になることに焦点を当てていたのだと思う。

以上のとおりに、

人間は仕事とプライベートをはっきり分けて考えることができない。

その上で、「実のあるネットワークを作りたい」と思うのであればやるべきことはただ一つ。

私生活でも仲良くできるような「友達になる」しかないのだ。

今まで「人脈づくり」に対して抵抗感や違和感を持ってきた私にとってこれは遥かに大きな発見だった。

「受け取るよりもはるかに多く与える」がネットワークを広げるコツ

ペンシルバニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授は、著書の中で、「ギブ・アンド・テイク」が「成功するための重要な要因」としてその考え方とともに提示をしている。

グラント教授は、人間の思考と行動の類型で、人々を「3種類」に分けた。

受け取ることが中心の人を「テイカー

与えてもらったらちゃんとお返しをする人を「マッチャー

そして、惜しむことなく与える人を「ギバー」とした。

この中で最も成功していたのはどのタイプだったのだろうか。

成功したのは「ギブアンドテイク」を最も想起させる「マッチャー」のように思うかもしれない。

ところが、最も成功していた人々は惜しむことなく与える「ギバー」だった。

そして、「ギバー」の代表例としてシリコンバレー最高のネットワーカーのアダム・リフキン氏を紹介している。

2012年の時点で48人がリンクトインにリフキンの推薦文を書いており、その誰もが、ギバーであることが彼の1番の特性だといっている。

マッチャーなら、お返しにこの48人に推薦文を書くほか、おそらくそのほかの重要人物にも、返礼を期待して、頼まれもしない推薦文を書くだろう。

ところが何とリフキンは、自分が受け取った5倍以上の推薦文を書いているというのだ。

リンクトインで、彼は丹念な推薦文を265人に書いていた。

リフキンのネットワーク構築法は、ギバーがネットワークをつくる際の典型だが、テイカーとマッチャーがコネクションを築き、そこから価値を得ようとするのとはまったく対照的だ。

ここでの重要なポイントは、リフキンが「受け取るよりもはるかに多く与える」ということである。

リフキン氏は惜しみなく「ギブ」する人だったからこそ、シリコンバレー最高のネットワーカーになることができた、ということだ。

ちなみに、最も成功していた人々が「ギバー」であったことには直感的にも納得がいく。

それは、「最も多く受け取る人は、最も多く与えている」というのがこの世の真実だからだ。

「自分がもっていて無限にあるもの」ならいくらでもギブすることができる

では、一体何を「ギブ」したらいいのだろうか。

ギブしようと思っても手元にある「お金」をすべてギブしてしまえば無一文になってしまうし、「食べ物」をギブしてしまえば餓死してしまう。

このことから導かれるのは「有限なものを無制限にギブすることはできない」という原則だ。

そして、当然だが「自分が持っているものしかギブはできない」。

このきわめて冷酷な原理にしたがえば「自分がもっていて無限にあるもの」ならばいくらでもギブすることができる、となる。

「そんなものは本当にあるのか」

「あるとすれば一体どこにあるのか」

作家の橘玲氏の著書「働き方2.0vs4.0」の中に、そのヒントは記されている。

どれほどギブしても減らないものなどあるのでしょうか?

じつはそんな特別なものがこの世界に2つだけあります。

それが「知識」と「人脈」です。

「ギバー」は、自分が持っている知識や人脈を惜しげもなくいろんなひとたちと共有するのです。

(中略)

ギブすることがなぜ重要なのか?このことはネットワーク理論からも説明できます。

まわりのひとたちにギブする知識や人脈をたくさん持っているひとは、それを利用してネットワークのハブになることができます。

そして、情報と同時に富もハブに集まってきます。なぜなら情報(知識)社会において、情報と富は同じものだから。

リフキン氏がリンクトイン上で265人もの推薦文を丹念に書いたというのはまさに、彼の「知識」と「人脈」を「ギブ」していることと同一だ。

LinkedIn では、同業者、同僚、学生など、これまで一緒に働いた人や学んだ人を推薦することができます。 

参照:知り合いを推薦する

これによって彼はネットワークの「ハブ」になった。

ハブとはネットワークの中心の事で、日本の空港でいけば「羽田空港」や「成田空港」がハブにあたる。

例えば、日本の航空の利用者数は、1位の「羽田空港」が「8,569万人」なのに対して、14位の「神戸空港」は「315万人」となっている。

このような感じで「ハブ」になると、ネットワーク内において繋がりのレベルが劇的に変わる。

したがって、「知識」と「人脈」を持っているならば、リフキン氏のように惜しみなく「ギブ」する方がネットワークづくりにおいては有効ということだ。

無財の八施(むざいのはちせ)」もどれだけギブしてもなくならない

実のところ、どれほど「ギブ」してもなくならないものはまだ他にもある。

日本人なら誰しも耳にしたことがある「布施(ふせ)」だ。

布施とは、「他人に財物などを施したり、相手の利益になるよう教えを説くことなど、贈与、与えること」である。

つまり、「布施」とは「ギブ」と同一なのだ。

加えて、布施とは何もお金を与えることだけではない。

財産がなくても、布施をすることはできる「無財の七施(むざいのしちせ)」という行いがある。

その七施とは、

1.眼施(げんせ)

優しく温かいまなざしで周囲の人々の心を明るくするように努めること

2.和顔悦色施(わげんえっしょくせ)

優しい笑顔で人に接すること

3.言辞施(ごんじせ)

優しい言葉をかけるように努めること

4.身施(しんせ)

肉体を使って人のため社会のために無料奉仕すること

5.心施(しんせ)

心から感謝の言葉を述べるようにすること

6.床座施(しょうざせ)

場所や席を譲り合う親切のこと

7.房舎施(ぼうしゃせ)

求める人や尋ねて来る人があれば一宿一飯の施しを与えその労をねぎらう親切のこと

そして、これに「耳施(にせ)」を加えた、「無財の八施(むざいのはちせ)」の考え方を私は参考にしている。

8.耳施(にせ)

耳で聞くこと(香りも聞くというので鼻施もここに含まれる)

たとえ「知識」や「人脈」が乏しくても、「無財の八施」でギブはすることは誰しもに可能なことだ。ここに地位や財産、名誉などは全く関係しない。

むしろ、「徳を積む」が思想の根底にある私たち日本人にとっては、「無財の八施」は最も取り組みやすく際限のない「ギブ」と言えるのかもしれない。

人から信頼を得るには時間がかかる。

人間関係を育てることも効率化することはできない。

したがって、「大切な人に精一杯の時間を使う」は良い人間関係をつくる上で肝要である。

実のあるネットワーク」が、今まで大切にしてきたこの考え方の延長にあることを知ることができたのは私にとっては非常に大きい。

公私を分けず「友達になる」ことを目指し、所有しているもの(知識や人脈や気)は、惜しみなく「ギブ・共有」すること。

この積み重ねが「実のあるネットワーク」を作っていく。

これが私のネットワークづくりにおける新しい方針である。

Photo by Antenna on Unsplash

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