アウトプットの視点

「実験するという感覚」が、今ものすごく役に立っている。

「大学で得ることができて良かったと思うことは何か?」

この問いをもらった場合を想定して、私は「三つの答え」を用意している。

一つ目が「一生大事にしたいと思える友人が出来たこと

二つ目が「実験するという感覚が染み付いたこと

三つ目が「成果が出るまで粘り強くやろうとすること」である。

一つ目に関しては大学生活全体を通して得ることができたもの。

二つ目と三つ目に関しては、卒業研究のために所属した「コンクリート研究室(以下、コンクリ研)」での経験から主に得ることができたものだ。

私は理工学部だったのだが、大学院には進まず4年で卒業し就職する道を選んだ。

そして、大学で学んだ専門性をそのまま活かす就職もしなかった。

新卒入社したのはコンクリートの匂いなど一切しない「マーケティング会社」である。

思うに、親が頭を抱えたのは一度や二度の話ではないだろう。

だが言うと、大学でした経験は、間違いなく今ものすごく役に立っている。

実験するという感覚」と「成果が出るまで粘り強くやる」に至っては、私の礎にまでなった。

そして、

30代半ばになった今、社会人生活を振り返ってみてとりわけ思うのが「実験するという感覚」が「ものすごく役に立っている」ということである。

「実験するという感覚」が染み付いた研究室生活

私の卒業研究は「短繊維混入系ポリマーセメントモルタルの性能評価」というものだった。

「なんのこっちゃわからん」

という人にもう少し説明を加えると、

接着力や曲げ強度を高める”ポリマー”と、ひび割れ分散性のある”繊維”を入れることで、コンクリートの耐久性の向上は見込めるか」を研究していた、とでも言えばちょっとはわかるだろうか。

さらに平たく言えば「新しいコンクリートのための材料開発」をしていたということになる。

繊維素材を混入するため「だけじゃない。テイ○ン」「ミラバ○ッソ」で知られる繊維企業の研究開発チームとの産学共同プロジェクトでもあった。

私はこれに友人とのツーマンセルで取り組んだ。

実際に行っていたことは、

水、砂、砂利、セメント、そしてポリマーといった成分の配合比を変えたり、投入する繊維の種類や量を変えたりしながら、実験データを取り検証を行い続け、パートナー企業と定期的に協議を行う、といったあたりになる。

いくつ「打設(*1)」して、いくつ「破壊試験」にかけたかは流石に頭で覚えられるレベルではなかった。

このように文章にしてしまうと意外とあっさりとしてしまうが、現実は結構過酷を極めた。

粉塵が常に舞い散り、朝になるとキーボードがギシギシ言うような劣悪な環境の中で、いい結果を出すために幾度となく寝泊まりした。

タレントの「菊川怜さん」も東京大学の工学部でコンクリートの研究されていたという事実、「Perfume」のライブDVD、そして「ニコニコ動画」が、私の支えになっていたのは間違いない。

量が必ずしも価値を生むわけではないが、卒業研究の論文に関しては、200ページを超えた。

卒業旅行の前夜。

ほぼほぼ完成したと思った論文を教授にメールで送り、逃げ出すように卒業旅行へ向かったあの日の夜は忘れない。

旅行中にかかってきた教授の電話をガンスルーしたため、研究室に戻ってきたら論文に対する大量のフィードバックと共に、派手に怒られたのは苦くも良い思い出だ。

今の私はあらゆる行動に対して「実験するという感覚」がある。

仮説を立て、行動を取り、データを収集して、データに基づき、その条件下で良くなかった選択は取らないようにし、次の手を考える。

そして、少しでも成果が出れば、成果に再現性が生まれるような仕組みづくりを考えるという具合だ。

思うに、コンクリ研での経験がなければここまでこの感覚を養うことはできていなかっただろう。

何が正しいかよりも何が間違っているかのほうが明瞭

新卒で入社したマーケティング会社でもとにかく実験を行った。

例えば。

新入社員の頃、

成果を出せば信頼は後から付いてくる

早くに成果を出してしまえば、他人と余計な比較をしなくて済む

という仮説を立て、とにかく成果(入社当時は営業だったので新規受注)を出すことに全集中した。

その結果、同期入社の中で最も早く新規受注を達成し、2年目には一部上場IT企業のマーケティングをフルサポートするチームに戦力として入れてもらうことも叶った。

そして、早くに成果を出せたことで、変に他人と比較するようなこともなく、淡々と自分の中に実験データを積むことに集中することもできた。

また、頻繁に電話がなり、人の声が耳に入ってきて平日の日中は「資料作りに集中できない」ことを早々に察知した私は、

平日はさっさと上がって外部の交流を増やし、資料づくりは土日に出社してでも作った方が生産性が上がるのではないか

といった仮説を立てて実験していたのも良く覚えている。

実際、誰もいない土日の会社というのは、集中して調べごとや資料作りをしたい私にとっては天国のような場所だった。

平日の夜は、社外の人にあったり、色々なお店を開拓したりして、そこでも多くの社会経験というデータを収集することができた。

他にも、

口で説明や質問をするよりも、資料を用意し口頭は補足にした方が、自分が欲しい情報が手に入り易く、コミュニケーションコストが下がるのではないか

どんなに歳の離れた無愛想なおじさんでも、絶対どこかしらに共通するコミュニケーションポイントはあるのではないか

会話の中で出来るだけ相手の名前を呼んであげた方が、距離が早く縮まるのではないか

といったように、顧客、上司、先輩といった「人間関係」においても小さい仮説を立ててはよく実験をした。

実験の結果は決していいものばかりではなかったが、「全てはデータである」と捉えていたため、結果が良くないからといって落ち込むようなことはなかった。

むしろ「これをやってはダメ」ということが分かることが私にとっては遥かに大きな学びだった。

ナシーム・ニコラス・タレブはこれを「否定の道」と呼び、「何が正しいかよりも何が間違っているかのほうが明瞭である」と述べている。

「否定の道」とは、何が正しいかよりも何が間違っているかのほうが明瞭であるという原則。

言い換えれば、知識は引き算によって膨らんでいくという原則。

また、何がおかしいのかを理解するほうがその解決策を見つけるよりも易しいともいえる。

何かをつけ加える行動よりも、何かを取り除く行動のほうが頑健である。

なぜなら、何かをつけ加えると、目に見えない複雑なフィードバック・ループを生む可能性があるからだ。

やってはいけないことが分かってくると、自ずと進む道は見えてくる。

ゆえに、結果に関わらずどの実験にしてもものすごく役に立ったのだ。

何かが上手く行った瞬間が堪らなく気持ちいい

そして、30代半ばになった今、

この「実験するという感覚」を、事業や仕事はもちろん、環境、情報の受発信、生活習慣などあらゆる場面に行き届かせようとしている自分がいる。

これは前述のとおり「実験するという感覚」が、今の自分にとって「ものすごく役に立っている」実感があるからだ。

しかし、理由はもう一つある。

自分の頭で考えて、仮説を立てて実験して、それが「上手く行った瞬間が堪らなく気持ちいい」のだ。

人気漫画「Dr.STONE(ドクターストーン)」の中に、硝酸とエタノールを使った実験の繰り返しから「鳥の石化」を溶かすシーンがある。

「Dr.STONE」は、こういう唆る実験を繰り返しながら、科学の力で文明を復活させ、石化した世界の謎に迫るわけだが、

こういう「スペシャルな感動」が得られるのも実験の醍醐味だろう。

結局、人間は一種の「ロボット」みたいなもの

私も含め、人間という生き物は皆、何かをインプットして、何かをアウトプットすることを繰り返している。

代表的なインプットは「時間」だが、「お金」「情報」「刺激」「環境」「食事」なども同類だ。

そして、少ないインプットで大きなアウトプットを生み出せるようになる(=生産性が高くなる)ことこそが「成長」なのだろう。

インプットを変えれば、アウトプットは変わり、

インプットを止めれば、アウトプットも止まる。

思うに、人間は一種の「ロボット」なのだ。

こう言うと「私はロボットなんかじゃない」と思う人もいるかもしれない。

だが私の経験則でいけば、このように考えるからこそ実験は進む。

例えば。

自分のことを「ロボット」だと思って、

一時的にお酒をやめてみる。

集中的に古典を学んでみる。

1ヶ月ニュースを絶ってみる。

3ヶ月間、異性の中で流行っていることに身を投じてみる。

着る服を制限する。

髪の毛の洗い方を変えてみる。

CO2排出量が少ない自転車移動を増やしてみる。

半年間、食べ物や飲み物を変えてみる。

毎日散歩をしてみる。

・・・・etc.

といったような具合に実験を行い、データを取り、分析を行い、より自分が心地いいと感じる方向へ、より誰かの役に立つ方向へ、「私というロボットの操縦桿」を動かしていく。

そして「成果が出るまで粘り強くやる」。

こういう感じに、「実験するという感覚」をさらに活用して、この先の人生をより愉しんでいきたい所存でいる。

*1 打設とは

Photo by National Cancer Institute on Unsplash

【著者プロフィール】

タナカ シンゴ

今推しの漫画は、ジャンププラスで連載中の「ダンダダン」です。「ターボババア」という現代妖怪に心とアソコを奪われそうです。

理工学部卒業後、東京のマーケティングファームに7年勤務。営業、リサーチ、コンサル、商品開発、集客、マネジメントの現場経験を積みジョブチェンジ。

現在は一人会社との複業で、中小オーナー企業や地方自治体をクライアントに商品開発と集客のプロジェクト運営などを行っています。

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◯noteマガジンで「事業の役に立つネームコレクション」を運営中

○Podcastで白湯専門番組「白湯FM」を配信中

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