自分を動かす

「集中」という希少資源を上手く使うために、個人的に取り組んでいる10個のこと。

何よりも「集中」こそが、個人のパフォーマンスを高めるということは昔から知られている。

実際、「良いアイデアを出すためにも、良い文章を書くためにも、良いプレゼンテーションをするためにも、本を良く読むためにも、すべてに「集中」が求められる」という経験則が私にもある。

ピーター・ドラッカーは「プロフェッショナルの条件」という著書の中で「集中」について、次のように述べている

成果をあげるための秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。

成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、しかも、一度に一つのことしかしない。

集中が必要なのは、仕事の本質と人間の本質による。

(中略)

自らの強みを生かそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要を認識する。

事実、それ以外に成果をあげる方法はない。

二つはおろか、一つでさえ、よい仕事をすることはむずかしいという現実が、集中を要求する。

人には驚くほど多様な能力がある。人はよろず屋である。

だが、その多様性を生産的に使うためには、それらの多様な能力を一つの仕事に集中することが不可欠である。あらゆる能力を一つの成果に向けるには集中するしかない。

思うに、「集中なくして成果なし」は過言でもなく真理だ。

ところがである。

日本の脳科学者の中野信子氏によれば、「人間の脳はもともと集中しづらい構造」になっているという。

集中しなければ成果は出ないにもかかわらず、脳はそうならないようにできているというのだから、なんとも世知辛い話だと私は思う。

なぜこうなっているのか?

それは私たち人間が「生命を維持し、子孫を守るため」である。

人間が簡単に集中して、周囲が見えないほど作業に没頭するようになってしまうと、周囲に危険が迫ったり、自分の子どもが危険にさらされたりしても、気づくことができなくなってしまう。

だからこそ私たちの脳は、危険を察知すべく、ひとつのことに集中しにくい構造になっているのだという。

これは直感的にも分からなくない話である。

さらに集中は「有限な資源」であるという点も見逃せない。

以前読んだ、JINS Think Labの井上さんの記事には下のような知見があった。

「1万時間の法則」を是とするなら、取り組めるものって、人生で5個しかありません。

人間が集中できるのは、1日4時間と言われていて。

1年間、頑張ってせいぜい1000時間くらい。

人生100年時代といっても、50年くらいしか仕事に費やせない計算です。

そう考えると人生において「5万時間」、つまり5個しか集中できる時間はない。

もっと簡単に言いましょう。

今やっていることに、人生の5分の1を捧げられるか。

それ以外のことに割く時間は、人生には本来ないんです。

参照:「何でやってるんだろう」は危険信号。やりたいことで人生を埋め尽くす、井上一鷹のキャリア論

このロジックでいけば「やりたいことだけやる」と考えるのは必然だろう。

そして、ここで言われている「人間は1日4時間しか集中できない」というのも耳にする機会が増えたように思う。

極度の集中」に関しては「2秒程度」しか続かないらしい。

野球のバッターが一球づつ構え直すのも、力士が何度も立ち合いを繰り返すのも、それぐらいしか集中力が続かないからで、時間稼ぎをしているわけではないのだ。

また、「情報」は「受け手の集中力を消費する」とも言われているが、これも実感と近い。

つまり、情報量が増えれば増えるほど、集中力は痩せ細ってしまい、痩せ細った集中力からさらに配分する必要性が生じ、いよいよ集中力は消費されていく。

したがって、この情報社会の中にいる以上は、「集中」に対して戦略的に取り組まないとすれば「いつの間にか集中できなくなっていた」なんてことはザラだ。

このようなことから「集中」における研究は日進月歩で、それらをエビデンスにしたライフハックが様々な文献で語られている。

例えば、以前「マルチタスクは今すぐにやめた方がいい」という記事を書いたが、これは極めて効果の高い施策であると実感している。

マルチタスクをこなそうとすると、瞬時(0.1秒未満)に集中する対象を切り替えるよう、脳が強要される。

すると遅れが生じ、切り替えのたびに集中力が落ちる。こうしたことが積もり積もると、貴重な時間が無駄になるうえ、知力が衰える。

しかし、すべてのライフハックを日常的に取り組むのははっきり言ってムリゲーだ。

多くのライフハックに取り組めば「集中」が得られるという話でもなく、逆に数が多くなると「義務感」や「努力感」が生じるので精神的にもよくなく、そして続かない。

だからこそ、自分で試してみた施策の中で「効果が高かったもの」や「努力しなくても継続できるもの」を中心に選び抜き常用するのが良いと私は思っている。

色々な施策を試してみた結果、私の中に今ある「成果を出す」ための「集中戦略」は以下の通りだ。

気が散るものを遠ざけ、割り込みを防ぎ、数時間に時間をまとめて、シングルタスクモードに入って一つのことにとことん集中する、そして、疲れの兆候を感じたら休む。

以下に「集中」するために個人的に取り組んでいる具体的な施策を10個記す。

いずれも効果を実感しているためもしかすると参考になるかもしれない。

1.スマートフォンを視界におかない

「気が散るもの」のナンバーワンは「スマートフォン」である。

自分のスマートフォンだろうが、他人のスマートフォンだろうが「視界に入っているだけで成績が下る」という驚くべき研究結果がある。

米テキサス大学オースティン校のエイドリアン・ウォード(Adrian Ward)氏による800人を対象とした研究では、

・スマートフォンを別の部屋に置いたグループ

・スマートフォンをポケットにしまっているグループ

・机の上に置いたグループ

にわけてテストを行った。

結果、別の部屋に置いたグループが一番成績がよく、机の上に置いたグループが最下位

ポケットに入れたグループも認知能力の低下が認められた

こうなる理由は、スマートフォンが「社会の窓」だからである。

スマートフォンは他者とつながるリアルな「社会の窓」であるため、視界に入るとスクリーンの向こうに広がっている社会のことを思い出してしまい、気が散ってしまう。

自分以外の友人たちが隣の部屋で楽しそうに話していて、そのドアが視界にあるようなものと考えれば集中できなくて当然だろう。

だから私は、基本的に仕事机の上にスマートフォンはおかず、別の部屋に置き、できるだけ遠ざけた状態で仕事をするようにしている。

出先のワークスペースで仕事をする場合も、鞄の中に入れるなどして手の届かないところにスマートフォンを置くことを徹底している。

2.電話に出ない・電話をしない

私は基本的に電話に出ない。

この理由は明瞭で「割り込み」を防ぐためである。

もらった電話に関しては、メールやメッセージを処理するタイミングに折り返す必要のある電話のみ、あとから折り返すようにしている。

また、よほどのことが無いとこちらから電話をすることはない

電話をかけて相手が不在だった場合、かけるために使った時間をまるまる無駄にすることになってしまうと思うからだ。

3.機内モードであらゆる通知を切る

集中したい時は、機内モードにしてメッセンジャーやSNSなどの通知はすべて切るようにしている。

こうすることで、通知による「割り込み」を徹底的に防ぎ、集中が削がれないようにしている。

4.数時間に時間をまとめる

「25分の作業+5分の休憩」を1ポモドーロとし、4ポモドーロ(2時間)ごとに30分間の休憩を取り入れる仕事術「ポモドーロ・テクニック」は、生産性を上げるための仕事術として有名だ。

実際、私もその効果を実感している一人で、メールやメッセージを返すような軽いタスクであれば十分役立つテクニックだと思う。

しかし、企画書をつくる、コンセプトを生み出す、執筆をする、といったような成果を生み出すには「25分」という時間では短い。

経験則では、こうした成果をちゃんと生むためには「60分」「90分」あるいは「120分」くらいのまとまった時間の集中が必要だ。

前述したドラッガーも成果のためには「数時間をまとめる」ことを強く推奨している。

報告書の作成に六時間から八時間を要するとする。

しかし一日に二回、一五分ずつを三週間充てても無駄である。

得られるものは、いたずら書きにすぎない。

ドアにカギをかけ、電話線を抜き、まとめて数時間取り組んで初めて、下書きの手前のもの、つまりゼロ号案が得られる。

その後、ようやく、比較的短い時間の単位に分けて、章ごとあるいは節ごと、センテンスごとに書き直し、訂正し、編集して、筆を進めることができる。

実験についても同じことが言える。

装置をそろえ、ひととおりの実験を行うには、五時間あるいは一二時間を一度に使わなければならない。

中断すると、初めからやり直さなければならない。

5.シングルタスクのモードに入る

シングルタスクのモードに入るために「TaskChuteCloud」は欠かすことができない。

このおかげでマルチタスクにならず、シングルタスクモードに入り、とことん一つのことに集中することができている。

6.重要な仕事からスケジュールにいれる

スケジューリングする際は、「重要な仕事」から埋めていく

なぜならば、もしも重要性の低い仕事からスケジュールを満たしてしまえば、重要ではないものによって満たされてしまうからだ。

重要な仕事にこそ「集中」という希少資源を充てたいためにそうしている。

ちなみにこの考え方は、ネット上でも有名な「この壺は満杯か?」という話を参考にしている。

ひろゆき氏の著書の中でも紹介されていたエピソードで、今や知っている人も多いのではないだろうか。

7.メール、メッセージ、SNSは見ていい時間を決めて、まとめて処理する

朝と昼と夕方の合計3回、30分〜40分ずつ時間を取ってメールやSlackやMessengerを見てまとめて処理をしている。

SNSに触れていい時間もこの時間の中にまとまっている。

したがって、それ以外の時間は「目の前にある仕事しか見ない」。

だから私にとって「即レス」は原則ではない。

8.歌詞のない音楽をかける

集中力を高めたい場合、「歌詞のないもの(インストゥルメンタルやクラシック)が最適」と言われている。

また、創造的な仕事を行うには「コーヒーショップのざわめき程度の音がちょうど良い」という研究結果もある。

以上のことから、Coffitivityというアプリを好んで使うことが多いのだが、確かに目の前の作業にとことん集中することができる。

私がヘッドフォン(あるいはイヤフォン)をつけている時は、基本的にCoffitivityを使っているか、もしくは何の音楽もかけていないかのどちらかだ。

9.五感に意識を向ける

執筆中や資料作成中に集中力が落ちたときなどは、「キーボードを叩く指先に意識を集中する」ようにしている。

気が散る状態とは、「今ここ」以外に心がとらわれることであるため、この感覚を戻すには「五感に意識を向ける」のが一番効く。

落ちた集中力を復活させる時によく用いる。

イメージは鬼滅の刃の「○○の呼吸」に近いのかもしれない。

10.仮眠を取る

そして、眠いと感じたら20分〜30分の「仮眠」を取る。

・眠くなる

・飽きる

・パフォーマンスが落ちる

・衝動的になる

これらは「疲れの兆候」であるため、もしも感じるようなことがあれば「今の自分は集中できる状態にない」と考えるようにしている。

ちなみに、眠れなくても20分目を閉じるだけでリフレッシュできたり、午後を乗り切る力が出るなど、集中に対してのメリットは十分にある

だから、厳密な睡眠時間や、眠ることに対してプレッシャーを感じる必要はない。

Photo by Stefan Steinbauer on Unsplash

【著者プロフィール】

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田中 新吾
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